結論を先に書いてしまうのであれば「ある」ということになる。例えどのような世の中になろうとも「資本主義経済の中において先物市場は絶対的に必要なものである」という消極的な理由であるが・・・。

よって、商品先物は存在し続けるものの、それを生業とする「商品取引員に未来はあるか？」という問いに答えるならば、現状のままでは日本における商品先物市場は、今以上にアンダーグラウンドのものになる可能性のほうが大きいのではないかと考える。

理由は単純である。世の中は常に変化しているのにもかかわらず、先物取引業界は旧態依然として何一つ変わっていないのである。むしろ変わることを拒んでいるかのようにも見える。

この業界のイメージを「地の底にまで落とした」といっても過言ではない手法は、紛れもなく「テレコール」である。確かにこの手法は過去において一定の効果を挙げた。ただし、この手法は過去のものであると断言しよう。情報が氾濫する今にあっては、電話口でどんなに甘い言葉を吐いたとしても、その結果として行われる取引は「やらされた」ものに過ぎないし、手数料も「払わされた」ものでしかない。現状において喜ぶのは弁護士だけである。

先日とある取引員の方とじっくりと話をする時間を持つことができた。一方は反響営業のみながらも「飛ぶ鳥を落とす勢い」で拡大する会社であり、一方は従来型のテレコール営業のみを行っている会社である。

もちろん反響営業が絶対的に善であり、素晴らしいものであるなどというつもりはまったくない。基本的に取引員が扱う商品は万人受けする商品ではないのであるから、取引員からの積極的な営業も必要不可欠なものであることは間違いない。

ただし、私にはこの二社にはその営業手法以上に絶対的な違いが存在するように思えてならなかった。そしてその結果が業績に現れているようであった。何が違うのか？会社の、それ以上に業界の「長期的なビジョンを持っているかいないか」である。

成長を続ける会社には長期的なビジョンがはっきりと存在し、「そのために今何をすべきか？」といったことを明確に打ち出している。そして自己に対する客観的な視点だけではなく、業界全体に対し「どうすれば発展するのか？」「改善するべき点は何であるのか？」といった批判的な目を持ち合わせている。その姿は第三者である私が、その示されるビジョンに対し感動を覚えるほどであった。対し、業績不振といわれる会社においては短期的な視点、つまりは目先の入金しか考えていないのである。

取引員に限らず、会社というものにおいて成長のキーとなるものは長期的な視点であると私は考えている。会社の示すビジョンに対し、全社員が意見を出し合い、討論し、検討する。その積み重ねこそが顧客に対する営業姿勢となり、ひいては会社の経営方針となる。

以前にも同じことを記したが、売上が会社を、市場を大きくするのではない。顧客が会社を、市場を大きくするのである。先物取引・FX取引における「顧客満足」といった基本的事項をもう一度考える必要がある。 そうすれば業界が、取引員がやるべきことがおのずと見えてくるのではないかと考えるのである。