日経平均株価が15,000円を回復した。5年ぶりとのことなので、株価といった面においては、景気は確実に回復に向かっているようだ。株価を押し上げている要因としては報道によると「外国資金」「個人投資家資金」のようである。
私はこの個人投資家による「ゲーム感覚」の証券市場への資金流入に少なからぬ怖さを感じている。ある証券会社によると新規口座開設者の半分以上は「まったくの素人」だという。この状況にもろ手を挙げて喜ぶ関係者のコメントには少なからぬ違和感を感じてしまうのである。大げさなことを言ってしまえば、証券取引とは一国の経済を左右する大事な場である。それが「ゲーム感覚」で行われる状態が「異常」とはいわないまでも、とても「通常」の状態であるとは思えない。
テレビでは連日のように投資で利益をあげた人物のエピソードをし、NHKまで主婦の株式取引に関するニュースを報道する。民放であれば言わずもがなである。いまさらながらではあるが、株式投資が「ブーム」なのである。
しかしながら、冷静に見るとあくまで「ブーム」である。(個人的な意見を言わせてもらえば)ブームを漢字一文字で表すのであれば「軽」であり「薄」である。ブームである限りその終わりは必ずやって来る。しかも突然に。
先日日経連の奥田会長が「日本全体がバブル経済のような雰囲気になっている」という旨の発言をした。同感であるし、見方によってはそれよりも悪化するような条件があるとも思っている。
大学で経済学を教えている友人がいる。ある日私は彼に質問をした。「バブルは誰が引き起こしたのか?」と。実は学説上さまざまな見方があるようであるが、土地の値上がりを背景にしたものであることは間違いない。
当時のバブルは土地の値上がりを背景にしたものであった。つまり、バブルの直接の恩恵を受けた人間は「土地」という文字通りの「リアルエステート」を保有していた人間に限られていた。一般の人が受けた恩恵はあくまで間接的なものである。しかしながら、今回は違う。言葉は悪いかもしれないが、一般市民を巻き込んでいるのである。そのため、このブームの崩壊は直接的な被害をもたらす恐れがある。
3年ほど前業界紙に「ゲームではだめだ」といった記事が掲載されていた。それを拝借して今回の文を締めたい「ブームではだめだ」と。「軽」「薄」ではない、「重」「厚」な「文化」にしなければ。
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