FX取引業界にとって、今年の夏は非常に静かな夏であったように感じている。

昨年の同時期の混乱（もしくは困惑）した状況と比べると、である。

最近になり新聞やテレビ等でも一部報道されているように、FX取引が一般投資家へ浸透しつつある。私が見た記事は「法改正による混乱を経て、FX取引が一般投資家の間で静かなブームになっている」という記事であった。個人的には「ブーム」という表現が気になるが、取引に対する肯定的な記事が掲載されたことは、単純に嬉しく思う。FX取引に対する一時期の報道に比べれば雲泥の差である。

ただしこのまま順風満帆とは行かないようである。

FX取引の市場規模は確実に拡大を続けている。しかしながら、その成長スピードには幾分衰えが見えているのも確かなようだ。

まず、OTCによるFX取引においては大手企業による寡占化が予想以上のペースで進行しているようである。これに加え、登録を終えた大手証券会社や銀行が正々堂々と参入してくることも予想される。春先の話にはなってしまうが、銀行として初めてFX取引への参入を果たしたジャパンネット銀行が開始数日で月間の目標口座数を確保したという報道は（少なくとも私にとっては）衝撃であった。中小の企業においては口座数の少なさを、一人当たりの金額を上積みさせることで何とか持ちこたえているところもあると聞く。

取り扱い枚数を順調に拡大させている「くりっく365」も同じように順風満帆とは行かないようだ。この公設取引は開始以来「取り扱い企業の少なさ」という問題を抱えている。

登録を却下された一部の企業は予想通り地下へと潜っていった。私たちはマスコミでも警察でもないので、ここで企業名を公表するつもりも、関係省庁へ告発するつもりも全くないが、当社が数ヶ月間その動向を追い続けている「ある企業」は石油商社に看板をつけ換え、数十人単位でアポインターの募集を行い、保険のアポイントと称してFX取引の勧誘を行っている。

何もないなら何もないで世の中に忘れられそうな怖さを感じるが、マイナスからのスタートだったこの取引が、一般投資家に受け入れられるような投資商品になるのも、もう少しではないかという印象を受けた夏であった。

競争の激しさは増しているが、この「静かな夏」が続くことを祈っている。