正確な統計を手に入れることはできなかったが、商品先物取引において「委託者の高齢化が進んでいる」という意見を多くの取引員から耳にする。インターネット取引が思ったように拡大しない理由として、委託者の高齢化をあげる取引員もある。
平たく言うのであれば、商品取引が「裕福なお年寄りの楽しみ」になりつつある。このままの状態が今後も続くとすれば、自然科学的に数十年後には投資としての商品先物取引が消滅することになる。(現物業者のリスクヘッジ機能も、現在その価格変動リスクの多くを請け負っている一般投資家がいなくなれば、発揮できないであろうと思われる。)少子高齢化という日本社会全体の大きな波は、商品取引業界にとっても無視できなくなりつつある問題なのである。
もちろん商品取引という金融商品が、その性格上その多くが余剰資金に乏しいと思われる若年層の顧客にに対し、じゃかじゃと勧められる商品ではないことは充分承知している。だからこそ、業界として、各企業として、それぞれの将来に対するビジョンというものが重要になってくるのである。
この業界の悲しい性として、目先の入金が全てに優先されるという現実がある。しかしながら、10年先、20年先とは言わないまでも、せめて数年先を見据えた企業活動を行うべき時期が来たのではないだろうか?
あらためて個人的な意見を述べさせてもらうのであれば、その市場規模に対し現在の商品取引業界の企業数は過大である。こういった場合においては、とあること(その多くは様々な規制であるが)をきっかけにして、一気に企業の淘汰が進んでいくということは、昨年来のFX取引企業を見れば明らかであろう。そしてその際には企業としての強者と弱者がハッキリと区別されることになる。
業界関係者であればすでに周知の事実であろうが、福岡商品取引所が関西商品取引所と、大阪商品取引所が中部商品取引所とそれぞれ合併し、2007年には国内の商品取引所が4ヶ所(東京穀物商品取引所・東京工業品取引所・中部商品取引所・関西商品取引所)となる。今年の春に横浜商品取引所が東京穀物商品取引所と合併したことも記憶に新しい。この1年で取引所は半減したことになる。
取引所の減少が業界全体の縮小を意味するなどという短絡的な考えは持っていないが、逆に今後の明るい未来を暗示していると考える人もいないであろう。もし商品取引業界が、右肩上がりの業界であれば「選択と集中」であるとか「業務効率化の推進」などと、もっともらしいビジネス用語で説明できることもできるかもしれない。
しかしながらこれらの場合にはそのような美辞礼賛を与えることはできそうにない。なぜならば、これらの取引所の合併は消滅した(する)取引所の救済という面を多く持ったものであるからだ。今年になりいくつかの商品取引員の廃業や、会員資格の返上など、商品取引員の数も減少している。各取引所の取り扱い枚数や、委託者数などはここで改めて言及することは差し控えたい。
雑学になってしまうが、40年前の1967年(昭和42年)当時は、日本国内に20箇所の商品取引所が存在した。国会での発言記録を元に、その20箇所を列挙してみる。
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繊維 |
東京 |
名古屋繊維 |
大阪化学繊維 |
大阪三品 |
福井人絹 |
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※函館海産物取引所は「するめ」を上場していたことで知られている。また福井の「人絹」とは聞きなれない言葉であるが、レーヨンのことである。
この40年間で取引所は1/5になった。40年後、その取引所の数はいくつになっているであろうか?そして何よりも、委託者数は?商品取引員の数はどうなっているであろうか?
ここ1-2年が、業界として、各企業としての踏ん張りどころであると感じている。 |